ミルクドーナツ事件

短答の過去問でご質問があったので回答します。平成19年の第2問枝1です。

19-2-1の過去問について質問させて下さい。解答には識別力を獲得すればと書かれていますが、指定商品がドーナツのままでは、4条フィルターで品質誤認(ミルク入りドーナツ)になってしまうのではないでしょうか?

本問は、

甲は、商品「ドーナツ」に商標「ミルクドーナツ」を用いて販売していたところ、この売れ行きが好調で、全国各地から買いに来る人まで出てきたので、甲が実際に使用している態様の商標について、「ドーナツ」を指定商品として出願したが、この商標は登録されることはない。

という問題です。
ここで、問題文で「登録されることはない」となっていますので、いかなる場合も登録出来ませんか?と聞いています。
したがって、仮に識別力を獲得し、更に指定商品を「ミルク入りドーナツ」と補正すれば登録できる訳です。
問題文の聞き方ですと言い過ぎであり、正解は「×」となります。

さて、このミルクドーナツですが、元ネタは判例(東京高裁昭和49.9.17)です。
このとき、特許庁からは「3条1項3号違反」のみが通知され、4条1項16号違反は通知されていません。

拒絶理由が来なければ、当然争われません。
では、何故4条1項16号違反が来なかったかというと、これは、「ドーナツ」というものは、必ず牛乳が入るものだったそうです(少なくとも昭和40年代当時はそのようだったみたいです)。

したがって、指定商品「ドーナツ」とした場合、ミルクが入っていないのは「ドーナツ」と言わないため、そもそも16号に該当しないからではないかという話があります。
(今は豆腐ドーナツとか色々ありますので、16号違反になるかも知れません)。