強行規定と裁量規定

どうやら、受験生が苦手としているところです。
条文の規定というより、日本語としての問題です。
以下のような問題を考えてみてください(正解を考えてから読んで下さい)。

1 特許庁長官は、17条3項の規定により、手続の補正をすべきことを命じた者が、指定した期間内に補正を行わなかった場合には、その手続を却下しなければならない。

2 特許請求の範囲の記載について、請求項毎に行を改めて記載しないことを理由として、拒絶の理由を通知することができる。


まず1問目。こちらは特許法18条1項を聞いている問題です。
条文では「手続を却下することができる。」と裁量規定になっています。
問題文は強行規定になっていますので「×」となります。

それに対して2問目。
これが拒絶理由に該当するか否かは、青本P.123に記載があります。
こちらは36条6項違反となります。
したがって「○」となります。


ここで受験生が間違えるのが2問目です。
拒絶理由通知については、条文上「強行規定」です。
したがって、問題文は「裁量規定」のように記載されているから「×」と考えてしまう人が多いのです。
このように解答してしまう原因は、条文や問題文の意味を考えてなく、単に「強行規定」「裁量規定」という表現を追っていることにあります。


1問目は条文上は裁量規定ですから、手続を却下する場合としない場合とがあります。
それに対して、問題文は却下する場合しかありません。
これが間違えているのです。したがって、「×」になります。

2問目は条文上強行規定です。
したがって、該当する場合は必ず拒絶理由通知となります。
ここで、問題文には「拒絶の理由を通知することができる」と書いてあるだけです。
すなわち、条文通り「拒絶理由」を通知することになるのです。
逆に、この問題を「×」としてしまうと、「拒絶の理由を通知することができる」が「×」ですから、その反対「拒絶の理由を通知することができない」になります。
裁量規定の反対が強行規定になる訳ではありません。

したがって、単に条文の言葉と違うからといって「×」としてしまうと、矛盾が生じてきてしまいます。
その結果、間違えてしまいます。

ちなみに、1問目も「○」としてしまうと、必ず却下されてしまい、条文上の「却下しない場合」がサポートされなくなるのです。

このように、単純に「裁量規定」「強行規定」と単純に判断するのではなく、問題文、条文の意味を考えて解答する必要があります。