商標法33条の2等における承継者について

質問があったのでお答えします。

商33条の2や商33条の3(特許権等の存続期間満了後の商標の使用をする権利)は、移転が一切できません。この理由は、どのように理解したら、よろしいでしょうか?

短答の勉強をしていると、この規定については他の条文と違い「当該業務を承継した者」の規定がないために、よく質問を受けるところです。

まず、これらの規定は例えば「特許権」を持っているから得られる地位です。
特許発明を実施するときに、特許権者が先願であれば、権利期間中は特許発明を実施出来ます。
ところが、商標権は更新できます。
そうなると、特許権の存続期間が満了となると侵害となり、実施が出来なくなるという不都合があります。
それを解消するための規定です。

この規定はちょっと変わっており、他の規定(32条等)と違い「周知性」の要件がありません。
もっと言えば、特許発明の実施時期についても規定が有りません。
したがって、相手の商標の出願日以降の実施、もっと言えば特許権の存続期間満了後の実施も条文上は含まれます。
(ただ、特許権の存続期間満了後や、登録商標が周知になった後の実施は、不正競争の目的があると考えられる可能性が出てきます)。

質問に戻ります。例えば、特許権者甲が特許発明イを実施しており、これを承継した乙が実施する場合を考えます。
特許権が存続期間中であれば、特許権を甲から乙に移転することにより、存続期間満了後の使用権も結果として移転します。
おそらく法が予定しているのはこのレベルでしょう。

しかし、特許権の存続期間満了後は、本来自由実施の発明であり、誰でも実施することが出来ます。
したがって、この時点については規定をしていない。
もっと言えば、条文上周知や実施時期の規定も無いような地位のため、そこまで優遇していないのかも知れません(この点は不明です)。
という理由で、33条の2、33条の3は「業務を承継した者」は含まないと押さえるのが妥当でしょう。

私見

例えば甲が乙に買収された場合等、イを継続実施できるか?については、条文上規定が有りませんので訴訟で争うことになるかと思います。
条文上禁止の規定は無いですし、明らかに一般承継のような場合であれば、認められる可能性は高いと思われます。