キーボード特許

PC Watchに掲載されていた記事で気になったので、これを題材に説明します。

特許第5524148号だけ見ましたが、登録日はH26.4.18ですので、プラットパットでも掲載されています。

【請求項1】
 キーボードが接続されていないときに実行される第1のキーボードドライバと、
 キーボードが接続されたときに実行される第2のキーボードドライバと、
 キーボードの接続されたと判定されると、前記第2のキーボードドライバを実行する判定実行手段と、
を備え、
 前記判定実行手段により前記第2のキーボードドライバが実行されると、キーボードによる入力が可能となることを特徴とするコンピュータ装置。

と、確かにクレームだけ見ると、権利範囲は大きそうなクレームです。

明細書をざっと読んだ感じですと、第1のキーボードが「仮想キーボード」、第2のキーボードが「外付けキーボード」という構成のようです。
特許権者側からすれば、この特許権は「外付けキーボード(第2)が接続されたときは接続されたキーボードが、外せばソフトウェアキーボード(第1)が使えるようになる」発明であると主張するでしょう(記事通り)。

ただ、最後の拒絶理由に対して提出された意見書等を読むと(出願経過の参酌をして権利範囲を狭めて行く手法は、レジュメ通りです)、2つのドライバがある場合の不具合等を課題として主張しています。
また、願書に添付された明細書や図5をみると、キーボードが接続されると仮想キーボードのドライバが停止される、すなわち、外付けキーボードを接続すると仮想キーボードは使えない?ってことになる可能性があります。
このように、明細書、出願経過を参酌した場合に技術的範囲の解釈をしていくと権利範囲が狭くなっていきます。

しかし、特許権の技術的範囲は特許請求の範囲が原則です。
実際特許請求の範囲の記載は限定されていないので、両方使えても良さそうです。
ただ、そうすると今度は無効理由が出てくる可能性があります。
実際、拒絶理由ではそれらしきことを指摘されているようです。

受験生に解りやすい部分だけ説明していますし、明細書等読み込んだりして、まじめに検討しないと実際は解りません。
ただ、単純な判断はできないということです。

先日の短答試験・論文試験を見ても、「場面をイメージする」というのがとても大切です。
よくある特許請求の範囲の解釈のレジュメ(請求項、明細書、出願経過、無効理由の検討等)は、受験生にとっては解りにくく単なる暗記になりがちです。

当該レジュメは実際にはどのように使われるか?という一例で説明してみました。

追記

本願は分割出願で、出願日は「2005/04/28」です。
なので、「2005/04/27」以前に、当該挙動をする発明が開示されているかを調べて無効調査はします。
まだiPhone等も当然無い時期で、Windows XP Tabletとか出ていたころです。