平成20年商標問題(5)

質問があったのでお答えします。柱書きがなくても話としては通じるでしょう。

A汽船会社とD社が共同で、指定商品「食器類」とする商標登録出願をし、商標「パテ丸」が登録された。他方、A汽船会社から「飲食物の提供」を指定役務とする商標「パテ丸」の商標権について使用許諾を受けてレストラン「パテ丸」を経営するE社が、包装箱に「ぱて丸」と表示し、甲市に古くから伝わる「ぱて丸」の肖像画を付した「マグカップ」を、来店者に記念品として配った。当該E社の行為が商標権侵害に該当しない立場から説明せよ。

論文問題はまず「立場」をはっきりしなければなりません。
自分がいつも言うのは論文試験は「弁理士の気持ち」で読んで欲しいということです。
この問題は、「E社の行為が商標権侵害に該当しない立場から説明せよ」とあるので、E社の弁理士になったつもりで考える問題です。
何とか、E社を救済してあげよう!という問題でしょう。

次に、商標法の考え方ですが、割とどうにでも考えられるのが商標法です。
何でもよいというものではありませんが、特許法と比較すればかなり幅があります。
それは、商標法の保護目的が「需要者」であり、需要者の考え方が色々あるからです。

本問は「ぱて丸」が「商標的機能」を発揮しているかという点が問題になります。
いつも言うように、それを判断するのは「需要者」ですので、受験生も同じです。

例えば、ヤマザキ春のパン祭りでおまけの皿をもらう事を考えてみましょう。
このお皿は「ラスカル」と「プーさん」との絵が描いてあります。
25点集めるとどちらかのお皿がもらえる訳です。

このとき、箱に「ラスカル」「プーさん」って書いてあったとして・・・
「これ、ラスカルってブランド(商標)のお皿かしら?」とは思いませんよね。
きっと「この箱に入っているのは、プーさんの柄のお皿」と思うでしょう。
すなわち、内容物を表しているに過ぎず、商標として機能していない訳です。
今回の問題はこれが「ぱて丸」に置き換わっているに過ぎません。

商標法の条文上・・・と考えることも重要ですが、商標は「需要者判断」の考え方も重要です。
まずは、自分が需要者だったら「商標として考えられるか」ということを考える必要があります。
三大機能が重要だと講義でしつこく伝えている理由はここにあります。

その上で、その理屈に合わせるためには、法律的にどのように考えるかという視点で見ていくと良いと思います。