質問(29条の2について)

スマートコースの受講生から質問があったのでお答えします。

馬場先生、1点質問させて頂けますでしょうか。
準公知について、先願の出願A(α/αβ)に対し、後願の出願B(β/β)が準公知で拒絶されるのは理解できます。また特許を受けるために出願B(β/β)が(γ/βγ)に補正することも分かりますが、出願公開前にも関わらず、出願Bが補正のために、出願Aの内容をどのように知ったのでしょうか?拒絶査定で出願Aの内容が、出願Bの出願人に説明されているのでしょうか。 お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します。

まず、出願Aが公開前であれば、そもそも29条の2の要件を満たさないため、拒絶理由は通知されません。
29条の2の条文上の要件は出願公開が要件だからです。
なので、公開前に・・・という出題は考えなくて大丈夫かと思います。

なお、質問中で出願Bを「βからβγに補正する」とありますが、これだと新規事項追加となりますので、補正できません。
「β/βγ」を「γ/βγ」に補正するのが正しいかと思います。



以下、発展事項です(受験勉強として無視してOKです。)



条文上、審査官は拒絶できませんので、上記の場合は特許査定となります。
したがって、特許査定後、先願が公開されることにより、無効理由を有することとなります。

なお、実際審査官としては、文献を発見したのにも関わらず、わざわざ無効理由がある特許査定をする必要は無いので、通知書がでます。
これは、審査ハンドブック11202に記載があります。
ちなみに、自分はこの通知を受け取ったことはありません。

11202 公開前審査
出願公開前に審査した時点で拒絶理由が存在した場合は拒絶理由を通知しているが、後に出願公開されると特許法第 29 条の 2 の先願となる未公開出願を発見した場合は、審査官は、当該先願となる未公開出願の出願公開を待って拒絶理由の通知を行う。未公開出願の出願公開を待つ場合は、審査官は、審査を一時保留している旨の通知書を審査官名で出願人に通知する。出願人に通知する通知書については、以下の記載例を参照する。

<記載例 1>
  通知書
特許出願の番号 特願○○○○-○○○○○○
平成○○年○月○日
特許庁審査官 ○○ ○○
特許出願人代理人 ○○ ○○ 様

標記の特許出願に関する先行技術文献の調査を行っ
たところ、後に出願公開されると特許法第29条の2
の先願となる未公開の出願を発見しました。このため、
現在、審査を一時保留していることを参考までに通知
します。
なお、当該未公開の出願が出願公開された後(平成
○○年○月頃の予定)に、改めて拒絶の理由を通知し
ます。