携帯端末サービスシステム事件

平成29(ネ)10096  損害賠償(東京地方裁判所 平成28(ワ)35182)
平成30年6月19日判決 控訴棄却(1部)特許権 (携帯端末サービスシステム)
構成要件充足性,均等侵害


ちょっと気になったのは、携帯サービスにおける課金方式の違い(構成要件C)が争点の1つとなって非侵害になっている点。

クレームは、

A:表示部と,電話回線網への通信手段とを備える携帯端末から,前記電話回線網に接続されたデータベースにアクセスすることによって,
B:前記データベースに用意された複数のキャラクターから,表示部に表示すべき気に入ったキャラクターを決定し,その決定したキャラクターを前記表示部にて表示自在となるように構成してある携帯端末サービスシステムであって,
C:その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する課金手段を備え,
D:前記キャラクターが,複数のパーツを組み合わせて形成するように構成してあり,
E:気に入ったキャラクターを決定するにあたって,前記データベースにアクセスすることによって,複数のパーツ毎に準備された複数のパターンから一つのパターンを選択することにより,少なくとも一つ以上のパーツを気に入ったパーツに決定し,複数のパーツを組み合わせて,気に入ったキャラクターを創作決定する創作決定手段を備え,
F:前記創作決定手段に,前記表示部に仮想モールと,基本パーツを組み合わせてなる基本キャラクターとを表示させ,
G:前記基本キャラクターが,前記仮想モール中に設けられた店にて前記パーツを購入することにより,前記パーツ毎に準備された複数のパターンから一つのパターンを決定し,前記基本キャラクターを気に入ったキャラクターに着せ替える操作により,気に入ったキャラクターを創作決定する着せ替え部を備える
H:携帯端末サービスシステム。

これに対して、知財高裁の判断。

2 争点1(被告システムは,文言上,本件発明の技術的範囲に属するか)について
⑴ 構成要件Cについて
ア 本件発明の「課金手段」(構成要件C)
本件発明の「課金手段」について,本件特許請求の範囲には,「その決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する」ものと記載されている。また,本件明細書の記載によれば,「課金手段」は,サービス提供者が「キャラクター画像情報の提供により効率良く利益を得る」(【0005】)ためのものであり,具体的には,実施の形態ないし実施例として,パーツ等に応じた情報提供料を通信料に加算する態様のみが記載され(【0019】,【0024】,【0033】,【0038】,【0043】),それ以外の課金手段は記載されていない。なお,【0043】では,「課金手段は先の実施形態で説明したに限るものではなく,…適宜選択設定すればよい。」とされているものの,「例えば」として,具体的には,課金対象が1パーツ毎,数パーツ毎及びパーツ全部が決まってから課金する例が記載されているのみである。これらの具体例は,いずれも購入したパーツ等に応じて通信料に加算する課金態様として理解される。
以上によれば,本件発明においては,決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算するという課金の態様こそがサービス提供者にとって効率良く利益を得る態様であるとされているものと解される。このことは,本件発明が電話回線網への通信手段を備える携帯端末(構成要件A)を前提とした発明であること,及び本件特許出願当時,携帯電話において,通信以外のサービスの料金を通信料に加算して電話会社が代行回収することが一般的に行われていたと見られること(乙9,10)とも整合する。
したがって,本件発明の「課金手段」(構成要件C)は,その文言のとおり,決定したキャラクターに応じた情報提供料を通信料に加算する態様の課金手段を意味するものと解される。
イ 被告システムについて
証拠(乙2,4)及び弁論の全趣旨によれば,被告システムにおいて,ピグ(キャラクター)を構成するアイテムを購入するための料金は,「コイン」(統合以前の「アメゴールド」を含む。以下同じ。)を消費することにより決済されること,ユーザーは,この「コイン」を,携帯電話会社の提供する決済システムにおいて通信料金と合算して料金を支払うことにより購入し得ること,この通信料金との合算は「コイン」という決済手段を購入する際に行われるところ,その際には,アイテムの購入とは無関係に被控訴人が事前に設定した購入単位数量の中から選択するほかなく,アイテムを購入する際には,その代金は上記方法により事前に購入された「コイン」によって決済され,この段階で通信料に合算されることはないことがそれぞれ認められる。
そうすると,被告システムは,「情報提供料を通信料に加算する課金手段」を備えるものということはできないし,「キャラクターに応じた情報提供料」を「通信料に加算する」ものということもできない。
したがって,被告システムは,本件発明の課金手段を有するということはできず,構成要件Cを充足しない。
ウ 控訴人の主張について
この点について,控訴人は,被告システムの課金手段と本件発明の課金手段は,課金の時間的差異があるのみで,被告システムにおけるコインの購入代金が携帯端末の通信料に加算されることに変わりはない旨主張する。
しかし,被告システムにおける「コイン」は,プリペイド式すなわち前払式支払手段である。前払式支払手段とは,利用者から対価としてあらかじめ支払われた金額に応じて発行され,財・サービスの提供を受ける際の支払手段として利用可能なものをいう(甲28)。そうすると,被告システムにおいて通信料に合算される代金は,「コイン」の発行の対価として支払われるものであって,「コイン」の消費によって決済されるアイテムの代金とは別個独立に理解把握されるべきものということができる。
したがって,本件発明の課金手段と被告システムの「コイン」との相違は,単に課金の時間的差異にとどまるものではなく,支払手段そのものの相違として理解される。
そうである以上,この点に関する控訴人の主張は採用し得ない。

最終的には通信料金として請求されることを考えると、
「同じ」という主張も解らなくはないです。
この辺は、出願日が平成12年の出願。
今のようなサービスって中々想定できない部分だと思います。

現在の実施方式以外にも、種々の方式を想定しておかないと、
権利から漏れてしまうんです。
システム系の特許の怖いところです。

判決文:
http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/832/087832_hanrei.pdf