TPP加入と著作権

TPP加入をすると著作権が非親告罪になって大変なことになるという記事が時々出てきます。
例えば:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121205-00000304-jisin-soci

TPPの他の分野は自分は全然解りませんが、知財分野については些か煽っている感が否めません。

非親告罪について

まず、非親告罪になるからコンテンツ産業が壊滅するというのもかなり行き過ぎな結論だと思っています。そもそも、この議論の根底に「非親告罪であれば著作権侵害をしても良い」という意見とすら読めます(例えば、強制わいせつ罪も親告罪ですが、訴えられなければOKと考える人はまずいないでしょう)。
また、「非親告罪になれば、捜査機関によりバンバン取り締まられる」と主張をする人もいますが、例えば道路交通法はどうでしょう。法定速度を超えた車を全部捕まえっているでしょうか?斜め横断した歩行者が片っ端から逮捕されているでしょうか?
非親告罪になったから、急に何も出来なくなるというのも短絡的な気がしています。

そう考えると、非親告罪になったとしても、大きなことは変わらないと個人的には思っています。「そうはいっても恣意的な運用が可能になる」との心配をされる人もいます。しかし、この点についても、恣意的な運用をしようとすれば現行法でも十分可能です(大手出版社の一社がごにょごにょすれば済む話です。多分、我々には解らない高度は取引があると思います)。
また、実際ディズニー関係については今の日本でも厳しく運用されています。ネットでもジャニーズ関係の版権は厳しく運用されているようです。このように上手い具合にバランスよく運用されているのです。

したがって、今が自由に何でも出来て、TPP加入で急に暗黒の時代が来るというものでも無いと思っています。

法定損害賠償

これについても実際どのような運用になるか解らないため、急に損害額が高額な状態となるとは考えにくいです。実際特許法102条ではそれなりの損害賠償額が推定されますが、これが不当に運用されている事例も見受けられません。米国のように懲罰的な損害賠償(損害額の○倍認めるような制度)が導入されれば別ですが、そこまでは行かないので無いでしょうか?

フェアユースの導入

自分の考えとしては、「TPPに参加すると著作権が厳罰化する」という議論で留まっているのが一番問題だと思っています。それらの権利は認めて、公正利用(フェアユース)の考えをしっかり入れるべきです。例えば同人誌等含めた二次的著作物がよく問題になりますが、これらについて、所定の要件を満たせば権利行使は制限されるといった規定を入れるべきです。また、入学試験の過去問において、問題文を過去問集では利用出来ないというのも、権利者が強すぎる気が個人的にはします。

平成24年の著作権法改正では、結局フェアユースの規定は殆ど見送られました。この辺を踏まえ、もう少し利用者の側面の規定を併せて導入すると使い勝手の良い制度になるのでは?と個人的には思っています。