商標法の質問について

Sコース受講生から質問があったのでお答えします。

商標法の4条1項15号では、他人(甲)の商標が登録・未登録のどちらであっても、他の要件が合致すれば該当するのでしょうか?
講義中では、「他人の商標は未登録」と言われた後で、「ソニー、オーディオ機器」は登録商標、という例え話になって、結局どちらなのか混乱しています

まず、困ったときは条文を見てみましょう(難しいですけど)。

商標法4条1項15号は、

他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

と書いてあります。

したがって、出願商標としてXがあるとします。そこに有名な商標Aが有ったとします。
この場合、AとXとが混同すれば4条1項15号に該当するというのが基本です。

さて、この商標Aは「登録商標」か否かですが、条文はパット見るとどちらでも良いのです。
しかし、かっこ書きの中に、「10〜14号に該当するものは適用しないよ」って書いてあります。
そうなると、仮に商標Aが登録商標である場合は、11号に該当するため、15号には該当しません。
それが「Aは未登録商標である」という理由です。

ではどうして質問者は混乱しているかというと、商標では難しい「指定商品」の考え方に問題があります。
例えば、商標Aが指定商品「車」で登録されていたとします。
そうなると、Xを指定商品「X」で出願すれば4条1項11号に該当します。
しかし、Xを指定商品「パソコン」で出願すれば商品非類似のため、11号には該当しません。
しかし、パソコンで使ったとしても、商標Aと混同してしてまう場合がある訳です。
この場合は15号に該当して拒絶されてしまいます。

講義の例ですと、商標「ソニー」が「オーディオ機器」だけで登録されているとします。
そうすると、第三者が商標「ソニー」を「オーディオ機器」で出願すれば、11号違反に該当します。
しかし、商標「ソニー」を「パン」で出願しても、「パン」では登録されていないので11号には該当しません。
しかし、「パン」に「ソニー」と入っていれば「あれ、ソニーがパンを作ったのかな?」と混同を生じます。
したがって、15号に該当して登録されません。

商標は、「商標」と「商品」との組み合わせで権利となります。
この意識はかなり重要です(多分、理解するのに普通では半年以上かかります)