ゴミ貯蔵器事件のような問題

ゴミ貯蔵器事件とは、特許法102条2項の解釈が争われた事件です。
102条2項の損害賠償額の推定規定は、特許権者が実施していなくても良いよという話です。
ここで受講生から「実施していないのに、損害があるというのは解りません」と質問がありました。

確かに特許では解りにくいのですが、意匠法では解りやすい事例があります。
先月の判決ですが、意匠権者が意匠権Xにもとづいて損害賠償を請求します。
しかし、実際に販売しているのは、関連意匠権Yの製品でした。
侵害者は、「意匠権Xの製品は販売していない」と主張をしたのです。

(1) 意匠法39条2項の適用の可否
意匠法39条2項は,意匠権者が故意または過失により自己の意匠権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,意匠権者が受けた損害の額と推定する旨規定する。
被告は,原告が本件意匠権を実施していないから,同条項の適用はないと主張する。しかし,意匠法39条2項には意匠権者が当該意匠権を実施していることを要する旨の文言は存在しないこと,同項は,損害額の立証の困難性を軽減する趣旨で設けられたものであり,また,推定規定であることに照らすと,同項を適用するに当たって殊更厳格な要件を課すことは妥当ではないことなどを総合すれば,意匠権者が当該意匠権を実施していることは,同項を適用するための要件とはいえない。そして,意匠権者に,侵害者による意匠権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,意匠法39条2項の適用が認められると解すべきである。
本件についてみると,証拠(甲7,乙16,17)によれば,原告は,本件意匠権の関連意匠である本件関連意匠の実施品を販売していることが認められるから,原告は,被告製品と競合する製品を販売しているといえる。そうすると,被告の侵害行為がなければ,原告の製品がより販売等できたということができるので,原告には,被告による侵害行為(被告製品の製造・販売等)がなければ利益が得られたであろうという事情があると認められる。
したがって,本件において,原告の損害の算定につき,意匠法39条2項が適用できる。

損害が発生していればOKだよという記載です。

なお、この判決文ですが、しっかり「条文による原則の説明」→「判例の規範」→「事案のあてはめ」と流れている訳です。