特許請求の範囲と明細書との関係

特許請求の範囲は「権利範囲」であり、その権利範囲を実現するために明細書があります。
したがって明細書は発明を実現するための「実施形態」となります。

発明の内容(構成要件)としては、必ず特許請求の範囲≦明細書となります。
しかし、上位概念、下位概念と考えた場合は特許請求の範囲≧明細書となります。
そうでないと、権利が小さくなるからです。

これは、レストランのメニューと提供される料理との関係に似ています。
例えば、レストランのメニューにハンバーグセットがあったとします。
ハンバーグセットの内容は、「ごはん、ハンバーグ、サラダ」と書いてあります。
このメニューが特許請求の範囲に相当します。
そして出てくる料理が明細書に相当します。
出てくる料理(明細書)は、当然メニューの内容をサポートしていないといけません。
サラダには、「レタス、トマト、たまねぎ」が入っています。
これが下位概念です。
メニューに普通「レタス、トマト、たまねぎ入りサラダ!」まで書きませんよね。
しがって上位概念の「サラダ」と書いておきます。
上位概念なので、将来的に「シーザーサラダ」を提供しても問題有りません。
「今日はレタスが高かったからキャベツにしておこう」ということもできます。

さて、料理を注文して「ごはん」がついていなかったらどうでしょう?
「おいおい、メニュー(特許請求の範囲)にごはんと書いてあるのに、料理(明細書)にないじゃないか!」
と怒りますね。
これがサポート要件違反です。
メニュー(特許請求の範囲)に書いてあるものは、必ず料理(明細書)に含まれていなければなりません。

逆にハンバーグの横に「マッシュポテト」がついていても怒る人はいませんね。
したがって、料理(明細書)には、メニュー(特許請求の範囲)に記載していないことが入っても構いません。
マッシュポテトが評判で、後でメニューに記載することも出来ます(減縮補正)。
しかし、一度「ごはん、ハンバーグ、マッシュポテト、サラダ」とメニューに記載したら、今後は必ずマッシュポテトを付けないと怒られます。

メニューが料理と違うよね!と感じるとメニューに対してクレームを入れます。
これが36条6項違反(特許請求の範囲の記載不備)。
料理がメニューと違うよね!と感じると料理に対してクレームを入れます。
これが36条4項違反(明細書の記載不備)。

どちらに問題があるか?と考えるのは自由です。
したがって、特許請求の範囲の記載が明細書を超えている場合は、通常両方の条文に該当します。