公知意匠と出願意匠

以前「意匠法において、有る問題だと拒絶に該当するのに違う問題だと拒絶理由に該当しない場合がある」との質問がありましたので少し書いてみたいと思います。これは「公知意匠」と「出願意匠」との違いがわかっていないためです。

「公知意匠」と「出願意匠」という言葉はありませんので、便宜上読んでいるだけです。

「出願意匠」・・・特許庁に出願した意匠
「公知意匠」・・・雑誌に掲載された意匠、販売店で売られている意匠、公報に掲載された意匠

すなわち、特許庁に具体的に出願した意匠が出願意匠。それ以外を公知意匠と呼びます。この2つの違いは「物品との関係です」

「出願意匠」・・・物品は願書に記載された物品=物品は1つ
「公知意匠」・・・物品は意匠から想定されるもの=物品は複数

意匠ですから、「形態」と「物品」との関係が重要です。
どんなに形態が同じであっても、「物品」が非類似であれば非類似の意匠となります。

さて、ここで「公知意匠」について考えます。
例えば自転車を見て「これは物品・自転車だ。従ってハンドルは用途・機能が違うから非類似だぞ」と考えるのは残念ながら弁理士受験生だけです。
普通の人は「ハンドルかっこいい!」と思えば、ハンドル部分に着目します。すなわち、物品はハンドルです。
また、「サドルいけてる〜」と思えば、物品はサドルです。
すなわち、公知意匠が「自転車」の場合、出願ではないので注目する部分により物品が変わります。
「自転車」を最大にし、「ハンドル」「ペダル」「サドル」「ライト」・・・色々な物品が導き出されます。
といっても、最大の自転車を超える範囲、例えば「自転車のおもちゃ」はやはり非類似です。

この公知意匠の場合は「物品は確定しない」というところがポイントです。
だから、雑誌に自転車が掲載され、そこに含まれるハンドルの意匠を出願すれば3条1項3号に該当します。
この雑誌に掲載された自転車の物品は、このとき「自転車」ではなく「ハンドル」だからです。

それに対して、9条等の場合は出願意匠との比較です。だから、出願意匠の物品は「自転車」で固定です。
この自転車が先に出願されていれば、ハンドルの意匠登録出願は。物品非類似で9条に該当しません。
このてんは8条についても同じことが言えます。

「公知意匠」と「出願意匠」との関係が解れば、3条、9条の処理は難しく無いと思います。
特に今年の短答試験で意匠法が7点以下だった人、論文試験で意匠法が出来なかった人は繰り返し学習することで、確実に点数を上げることが出来ます。
意匠の原則を振り返りつつ問題文に当たっていって下さい。