差戻し審決

今年も残すところ僅かとなりました。
皆さん、年末年始、色々な意味で楽しんでいますか!?

差戻し審決について

さて、今日は今年も終わりなので、差戻し審決について少しだけ説明します(あまり年末とは関係ありませんが)

通常、(特許法における)拒絶査定不服審判において、「拒絶査定が妥当でない」=「特許にできる」ことが大半ですので、特許審決になります。
それは、審決取消訴訟とちがい、審判官は自分で「特許」にすることができるからです。
なお、裁判官は、自分では「特許」にすることができません。
だから、審決を取り消して、必ず特許庁で再度審理されます。

なので、審判官が「特許」していいにも関わらず、審査の場面に差し戻されるというのが、中々イメージがわきません。
具体的な場面を少しだけ説明しておきます。

パターン1

最初のパターンは、出願日(優先日)より後の日付の引例で拒絶査定がされている場合です。
そんな事があるのか!とお思いですが、やはり時々あります。

例えば、平成16年7月12日(優先権主張平成16年2月16日)の出願について、審査官は公報発行日が平成17年8月11日の文献に基づいて進歩性違反を指摘して拒絶査定としています。
結果として、審判官は、「平成22年7月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2、18-20に係る発明の優先日より後に頒布された刊行物である引用文献1を引用して特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原査定は違法なものである。」として原査定を取消、審査に差し戻しています(不服2011-14608)。

このように、引例が間違えていると、審査されていないよね?ということで、もう一度審査に戻っています。

パターン2

新規事項追加だから審査対象としないといった内容が、審判で新規事項の追加に該当しないと判断された場合です。
この場合、「審査しない」と審査段階で宣言されているので、「もう一度審査して下さい」という審決が出ています。

「本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,適法になされたものである。・・・以上のとおり,本件補正は適法になされたものであるから,原査定の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。そして,・・・原査定の理由が存することを根拠として,本件補正後の「請求項に係る発明については新規性,進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。」と記載されているように,発明に対する実質的判断が審査においてされていない。よって,本願は,さらに審査に付すべきものと認め,特許法第160条第1項の規定により,結論のとおり審決する。」(不服2010-20174)

パターン3

その他のパターンもいくつあります。
例えば、拒絶査定に「この出願については、付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶査定する。」としか記載されておらず、理由も解らないという場合があります(審判1999-18876)
あと、変わったものでは、当事者が亡くなっていたというパターンがあります。
「当審において審尋の結果、出願人(請求人)の甲が、拒絶理由の通知前である平成11年12月17日に死亡していたことが判明した(平成14年1月18日提出の回答書参照。)。
そうすると、本件出願人らは代理人に委任することなく手続きを行っているので、特許法第24条で準用する民事訴訟法第124条第1項の規定により、当事者たる出願人甲の死亡により、本願出願手続は中断した。そして、その後受継も行われないまま、拒絶査定されているものである。したがって、受継のないままなされた原査定は適法なものではない。」

まとめ

拒絶査定不服審判において、拒絶理由に該当しなければ「特許審決」となります。
ただ、上述したような特殊な事情がある場合に、一部例外として審査の差戻しとなる場合があります。

この「例外がある」という場合が重要で、拒絶査定に該当しないからといって、必ずしも審査に差し戻されるという訳ではない点に注意して下さい。
(自分は審査差戻しの案件を担当したことはありません)