今日は怪しい話でも・・・
あっという間の3月ですね。毎日更新しようと思ったのですが、収録が重なると結局何もせず。単なるネタがないだけ・・・いや、あったのですが。
今も明日の収録用のスライドを作成しつつ、現実逃避として更新している状態です。
さて、今年は収録講座ということで、「どこまで話をしようか」といつも悩んでいます。試験に関係することは当然するので良いのですが、それ以外の部分のお話をどうしようかと。いつもは受講生の層や出席している人の反応を見て決めています(笑)
例えば、今日は不正競争防止法だったのですが、悩んだけど結局ちょっとだけしてしまった話に「ヨドバシポルノ事件」があります。これは、「ヨドバシカメラ」が、100メートル位離れて営業していた「ヨドバシポルノ」というお店を訴えたという事件です。
この「ヨドバシポルノ」。名前通りどうやら「ポルノ屋さん」らしいです(具体的なイメージが正直今ではわきません。ただ、良からぬイメージはあります)。ヨドバシカメラとしても放っておくことは出来ずに、「ヨドバシ」と使うなと訴えます。
この事件、この手の裁判では珍しく地裁ではヨドバシカメラ敗訴でした。その後、高裁ではヨドバシカメラが勝訴しました。そして、こういう事件になると結構当事者の主張が面白いのです。
例えば、不競法で訴えるためには混同が要件となります(当時は2条1項2号がない)。そこで、ヨドバシカメラ側は、
原告も写真パネル(いわゆるヌード写真)等を販売しており、被告の取扱い商品と一部において重なりあう点もあり、しかも、原告は、前記1のとおり、短期間に急成長した若い企業であり、幅広い事業意欲を有し、今後共多角経営化を進めていくことが明らかである。
「混同してるじゃん!」という為に、しれっとすごい事を言います。え?ヨドバシってその手の商売も広げるつもりだったの?と。ただ、結果として地裁では不正競争行為が認められません。
ところが、その後高裁では逆転劇を繰り広げるのですが、どうやって混同を認めたのか。まず、一つは「ヨドバシ」の部分に識別力を認めます。これは何となく納得です。
問題は「カメラ」と「ポルノ」の相違について。
「ヨドバシカメラ」なる表示に伴う営業のイメージとしては、カメラ及び写真機材というにとどまらず、その関連商品をも含めて取り扱う雑貨商的なイメージが加わり、安売りを謳う派手な広告からみて、大衆の欲望に訴えて販路を拡大するというものであることが認められる一方、「ヨドバシポルノ」については、「ポルノ」なる表示を用いてする営業に係る取扱商品は写真に関連するものであることを連想させ、…る。このような情況に照らせば、同一主体に係る各種の営業をそれぞれ共通の名称下に営業別の普通名称を受けて表示することが一般に行われていることとあいまつて、「ヨドバシポルノ」…なる表示を付された営業が「ヨドバシ」部分を共通にする「ヨドバシカメラ」の表示をもつて営業している主体に係るものであると誤認される蓋然性はあるものというべきであり、結局、「ヨドバシポルノ」…なる表示は広く認識される「ヨドバシカメラ」の表示と不正競争防止法第一条第一項第二号にいう類似の関係にあるということができる。
言ってしまえば、「ポルノ」→「写真」→「カメラ」となるよねという理屈です。結構すごい理屈だと思っています(ちなみの上記不競法の条文は旧法です)。そもそも、そういうお店が頑張って店の名称を変えないというのは、色々な事情があるのでは?と勘ぐってしまいます。
不正競争防止法や商標法はちょっと怪しい事件が満載です。しかし、こういう事件が積み重なり法律が改正されていくのです(例えば、ポルノランドディズニー事件)。
こういう変な話って結構インパクトがあって、記憶に残るものです。そっから条文を理解して欲しいと思い、悩んだ末にいつもしている訳です(決して面白いだけでしている訳ではありません!・・・としておきます)
判例
- ヨドバシポルノ事件(第1審) 昭和56年10月26日 東京地方裁判所
- ヨドバシポルノ事件(第2審) 昭和57年10月28日 東京高等裁判所