39条5項とブラックボックス化
勉強が進んできた受験生から良く聞かれる質問の一つとして
特許法の場合、意匠法66条3項に該当する規定が無い。
すなわち、同日出願で拒絶された場合、出願がブラックボックスになるのではないか?
というものがあります。
条文上は、意匠法66条3項に該当する規定がありませんので、確かにその通りとなります。では、実際にはどうなるか?ということです。
この場合、早く審査を進めるため早期審査(優先審査は使えないのは解りますね)を想定するとします。
現在、早期審査の事情説明書を提出し、最初の拒絶理由が出るのが早くて1ヶ月程度で出る場合あります。
もし、これが同日出願であれば、まず協議指令が出ます。応答期間が60日。
その後どの程度日数が係るか解りませんが、仮に1ヶ月程度で審理がされたと仮定します。協議指令に答えない場合、次に、39条の拒絶理由が出ます。応答期間が60日。
この拒絶理由に対しても応答しないと、今度は拒絶査定となります。審査に1ヶ月と考えて、拒絶査定が確定するのに3ヶ月かかります。
60日は、およそ2ヶ月と考えると、出願から拒絶査定確定まで、最短で10ヶ月となります。
公報発行が出願から1年6月後、公報発行準備に2〜3ヶ月係りますので、1年3〜4ヶ月までに特許出願の拒絶査定が確定すれば、確かに公報は発行されず、ブラックボックスとなります。
しかし、これはかなり「机上の空論」です。そもそも、「甲・乙の異なる人が、同日に同じ発明を出願する」というパターンもレアですが、更に甲・乙とも早期審査を行う必要があります(39条は片方の審査を待ちます)。
さらに、特許庁からのアクションが総て「1ヶ月」と仮定していますが、これはどの程度の期間になるか不明です。
事例を知らないので解りませんが、そもそも同一発明、同日出願、両者とも早期審査というかなり特殊な事例の上、審査手続もほぼ最短で進むという事例にかなり無理があるかと思います。
仮に、このような自体となれば、特許庁は審査日数を調整し、出願公開がされるように持っていけば済むだけです。
なお、同一人がわざとやれば、早期審査自体が認められないかも知れません。
このように、実務的に起こりえないような事例は弁理士試験には出題されにくいです。新規性や優先権等、短答試験ではかなり複雑な事案が出題されますが、可能性がない出題ではありません(新規性喪失+優先権主張で短答より複雑な事案も自分でも扱ったことがあります)。
色々気になるところですが、こういう規定については、そもそも起こりうるのか?という視点も、勉強をする上では必要なのかも知れません。