外国語特許出願と補正期間について

質問があったのでお答えします。
実際は法改正の推移等があって現在の規定になっているのですが、試験的な理解ということで簡単に説明します。

外国語特許出願の補正は、なぜ国内処理基準時が要件となっているのでしょうか?

補正をするためには、「明細書等」が確定していなければなりません。
外国語特許出願の場合、国内書面提出+翻訳文提出+手数料納付で基本的には明細書等が確定します。

しかし、これには例外があり、19条補正の翻訳文が国内処理基準時迄提出可能です(184条の4第6項)。19条補正の翻訳文が提出されると、特許請求の範囲が差し替わるため、補正の根拠となる日本語の明細書等(特許請求の範囲)が変わります。
したがって、外国語特許出願の補正時期については、日本語による明細書等が確定する国内処理基準時の経過を待つのです。

日本語特許出願の場合、19条補正の写しについては、単なる補正扱いです。したがって、日本語の最初の明細書等が既に確定しているため、国内処理基準時の経過を待つ必要はありません。

なお、外国語実用新案登録出願の場合も、国内処理基準時の経過を待つ必要はありません。これは、無審査の場合は、直ぐに補正出来る旨が、PCT規則52.1(a)にあり、それを直接適用しているからです(青本 P.910)。

なお、外国語特許出願の翻訳文については、重ねて提出することは出来ません(平成25年度 実務者向けテキスト PCTに基づく国際出願の国内移行手続 P.19)。

補足

なお、上の説明を読んでも違和感があるかも知れません。
これは最初に書いたように、「法改正の推移」という事情があります。
例えば、誤訳訂正書が入る前の条文(平成6年改正前)では、旧184条の4第3項に以下の様な規定がありました。

3 第1項の規定により翻訳文を提出した出願人は、国内書面提出期間内に限り、その翻訳文に代えて、新たな翻訳文を提出することができる。ただし、出願人が審査請求をした後は、この限りではない。

誤訳訂正書の制度が無かったため、(今で言う)国内処理基準時経過までは翻訳文については出し直す事が出来ました。
したがって、国内処理基準時経過するまで、完全に明細書が固まらないのです。
これにより、外特の補正の時期(旧184条の11)に、国内処理基準時経過という要件が入っていたのです。
それが、誤訳訂正書が入った現在でも、外特に関しては19条補正の翻訳文提出で一応起こりうる状況です。
そのため、184条の12については規定を残しているというものです。
特許法等を読んだときに「これってチグハグな制度だな?」と思った時は、そういう歴史遺産の場合もあります。

また、外国語実用新案登録出願について、青本に理由が書いてあります。
しかし、読んでもいまいち解りにくいと思います。
これは要約すると「実案だから、まぁいっか」という趣旨なのです。
例えば、実案で外国語書面が認められていません。この趣旨は、平成6年改正本を読むと
「ニーズもないし、アメリカからも言われてないから、とりあえず要らないでしょ」
位の軽いノリです。
この「ニーズがない」という理由は、受験生が考えている以上に重要な理由です。
近年では、仮専用実施権が実用新案法、意匠法で採用されていない理由だったりします。
ということで、悩んでも実は明確な答えが出ないというのが本当のところです。

自分の場合は、過去の条文や特許庁の運用まで調べて正解を見つけていきます。
そして調べた上で、「こういう理由だから押さえなくて良い」という話をしています。
ということで、受験生の試験対策としては、自分なりの理由付けを考え、答えが出せるようにしてしまうのが戦略上得策です。