特許請求の範囲の書き方
昨日明細書と特許請求の範囲について記載しましたが、この考え方も一例であるとご理解下さい。
すなわち、どれが正解というのがなく、弁理士やクライアントによって考え方が変わるのです。
例えば、コピー機において原稿を読み取る部分をクレームにする場合、特許請求の範囲に「スキャナ」と記載て欲しいと言われる場合もあります。
発明の実施形態にスキャナしか書いていないし、そもそも製品でもスキャナしか想定していない、だから広く書く必要は無いという考えです。
審査で余計な引例を引っ張られる可能性を排除できますし、侵害特定が容易という側面もあります。
またクライアントによっては「画像入力部」と記載して欲しいと言われる場合もあります。
画像を入力する手段としては、スキャナだけではなく、例えばメモリーカードから読み込まれる場合もあるからです。
スキャナと記載すれば、文言侵害ではスキャナが構成要件になるため、そこの限定を外したい場合です。
このように、特許請求の範囲をどう記載するかは考え方によって変わります。
一概に上位概念に上げればOKとは言えないのが難しいところです。
また、上位概念に上げなくても、第三者が回避しにくい構成要件であれば無理に上位概念に上げる必要もありません。
上位概念に上げれば権利としては強いですが、審査には弱くなります。
この「権利に強い」と「審査に強い」はトレードオフの関係で、両方はなかなか成立しない関係だからです。
自分の場合はやはり「画像入力部」と特許請求の範囲には記載します。
そして、明細書(実施形態)で「本実施形態の画像入力部は、例えばスキャナにより構成されている。・・・。なお、本実施形態ではスキャナとして説明するが、画像データを画像処理部に出力できれば良く、例えば記録媒体に記録された画像を読み出して画像処理部に出力しても良いし、通信部を介して画像を受信し、受信された画像を画像処理部に送信してもよい」と発明を広げておきます。
概ね3つ以上実施形態を書いておけば、発明の構成要件は実施形態に限定解釈されないという米国ルールを考慮したものです。
このように、実務になると正解がないのが難しいところです。
弁理士は代理人ですから、まずはクライアントがどう書きたい(どう書く起業か)を題意把握した上で、それに従った書き方になります。
書きたい事を書くわけではありません。
題意把握をして、書きたい事を書くのでは無く、望まれていることを書く、答える。
まさに論文試験、口述試験の考え方と共通なのです。