国内優先権のメリット
ご質問があったのでお答えします。
国内優先の有り難みが良く分かりません。同一発明者or同一出願人なら公開前まで29の2の適用はない…国内優先は、1つの出願について包括的でもれのない出願に出来るところが良いのでしょうか?
特許法の勉強をしてれば、当然全ての制度がありがたい!という訳ではありませんし、「こうした方が良いんじゃないの?」と思うことはあります。
これは、特許法自体が産業立法である以上、仕方ないことです。
さて、国内優先権制度について時々ご質問を頂きます。
まず、ある発明Xを特許出願します。
次に、それの改良発明Yをした場合、通常は別出願にします。
何が何でも国内優先権制度を使うという事はありません。
質問者が書いていますように、29条の2の適用はありませんから、出願人同一であれば別出願を行います。
では国内優先権制度を一番使うメリットがあるのはどういうときでしょうか?
これは、基礎となる出願の発明を広げる場合です。
例えば、心拍数に基づいて、患者の体調を判定できる装置を思いついたとします。
明細書には心拍数から、患者がご機嫌か否かを判定できる方法が開示されています。
このとき、請求の範囲は通常上位概念で記載します。
例えば、特許請求の範囲は
【請求項1】患者の身体情報を検出し、検出された身体情報に基づいて患者の状態を判定する判定装置。
のような記載になります。
ここで受験生が解りにくいのは、明細書の発明=特許請求に記載する発明では有りません。
明細書は、実施形態の一例に過ぎません。したがって、特許請求の範囲は普通は大きく書くのです。
さて、この後研究をすると、どうやら体温でも判定できるということが解りました。
この場合、体温も身体情報の一種ですから先の出願と範囲がぶつかります。
したがって、明細書の第2実施形態として追加した方が、得策だったりします。
国内優先権を使用して出願することにより実施形態に追記ができるのです。
これによって、出願した内容に、体温まで入る事が明確となりました。
当然これ以外にも国内優先権制度を利用するメリットはあります。
ただ、この辺は実際の案件毎に判断する必要が出てきます。
具体的な案件が思いつかないと、別出願でも同じ結果となりそうな気もします。
ただ、先に出願した内容の発明を広げたり、39条違反を解消出来る(39条は同一出願人であるため)というメリットは生じるのです。