分割出願の時期

分割出願について争いとなった事件。

原告は,平成18年4月13日(以下「原出願日」という。),発明の名称を「監視のための装置および方法」とする特許出願(特願2008-505959号。優先権主張:平成17年4月14日,英国)をし,平成24年9月6日,上記特願2008-505959号の一部を特願2012-195692号として分割出願し,平成26年7月28日,上記特願2012-195692号の一部を特願2014-152697号として分割出願し,平成28年2月16日,上記特願2014-152697号の一部を特願2016-26972号(以下「本願」という。)として分割出願した(甲2,8~10)。
特許庁は,平成29年10月13日付けで本願について拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)をし,本件拒絶査定の謄本は,同月24日に原告に送達された(甲1,3)。

これに対して、拒絶査定不服審判を請求しないで分割出願をしたところ、原出願の出願日が平成19年4月1日以降の出願ではないため、旧法が適用されてしまったという事例。
旧法では拒絶査定後に分割出願をするためには、審判請求をする必要があったため、18条の2で却下されてしまいました。

流石に平成18年の出願は殆ど残っていないので、現在旧法の分割要件の時期等検討することも殆どなくなりました。
仮に、ここ数年以内の合格者であれば、そもそもこの制度を知らないことも十分考えられる状況です。

裁判所も手厳しいです。

弁理士法3条によると,弁理士には,業務に関する法令に精通して,その業務を行う義務があるところ,通常の注意力を有する弁理士が,通常期待される法令調査を行えば,本件拒絶査定後,本願から適法に分割出願を行うためには,拒絶査定不服審判請求を分割出願と同時にする必要があると認識することは十分に可能であったと認められる。したがって,D弁理士が上記のように誤信をしたことは,弁理士として通常期待される法令調査を怠った結果であるというほかない。D弁理士以外の他の本件代理人らについても,いずれも原告本人から委任を受けた弁理士である以上,適宜,必要な処置を講じて,本件のような過誤の発生を防止すべき義務があったといえ,D弁理士同様,弁理士として通常期待される注意を尽くしていなかったものというべきである。
以上のとおり,本件代理人らが通常期待される注意を尽くしていたとはいえない以上,本件において,特許法121条2項にいう「その責めに帰することができない理由」があったとすることはできない。

よく、受験生の特権は間違えて良いことだし、論文の項目落ちは、せいぜい「落としてしまった!」で済むと伝えています。
短答も「間違えた!」で済みます。

しかし、実務ではそうは言えません。
そう考えれば、試験のちょっとしたミスは、必要以上に落ち込むことはなく、
「合格する前に気がついて良かった!」と、前向きに考えていく方が楽だと思います。

判例元:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/575/088575_hanrei.pdf