意匠法5条3号について

質問があったのでお答えします。

口述問題で、意5条3号に関し、規格化されてる事務用紙とかも準必然的形状にあたらず三号にあたらない、とありました。
いったい具体的にどういうものが準必然的形状に当たるのかよくわかりません。
「形状にもとづく機能の発揮が主たる使用の目的となっている物品」に限られるとありますが、それと必然的形状との差もよくわからなくなりました。。

まず、必然的形状ですが、「必ずその形になる」というものです。
具体的には以下の通りです。

出願された意匠が必然的形状に該当するか否かは、物品の技術的機能を体現している形状のみに着目して判断することとし、その際には、特に次の点を考慮するものとする。
① その機能を確保できる代替的な形状が他に存在するか否か。
② 必然的形状以外の意匠評価上考慮すべき形状を含むか否か。

例としてはパラボナアンテナ(「衛星放送受信アンテナ用反射鏡」)が挙げられます。
この意匠は、パラボナアンテナの反射鏡としての機能を確保するために不可欠な、一定の円形開口を有する回転放物面の形状(x^2+y^2=4fz により特定される。)を反射鏡面として用いるものだからです。


それに対して、物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠は
「必ずその形でなかければいけない!」というものではないのですが、規格上そうなってしまうというものです。

物品の互換性の確保等(技術的機能の確保を含む)のために、物品の形状及び寸法等の各要素が規格化・標準化されているものであって、規格化・標準化された形状及び寸法等により正確に再製せざるを得ない形状からなる意匠についても、必然的形状に準じて取り扱う。ただし、本規定の適用は、形状に基づく機能の発揮が主たる使用の目的となっている物品に限ることとする。
出願された意匠が準必然的形状に該当するか否かは、形状のみに着目して判断することとし、その際には、特に次の点を考慮するものとする。
① その形状が標準化された規格により定まるものであるか否か。
② 標準化された規格により定まる形状以外の意匠評価上考慮すべき形状を含むか否か。

例としては、「磁心」の形状(この意匠の形状が、 JIS規格「C2516PP型磁心 PP9×5」に基づくもの)や、「電気コネクター」の形状(この意匠の形状が、JIS規格「B8031 ねじ型端子M4」に基づくもの)が該当します。
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(「平成10年改正意匠法 意匠審査の運用基準」より)


しかし、準必然的形状の適用は、形状に基づく機能の発揮が主たる使用の目的となっている物品に限られています。
したがって、例えば以下に示すような物品は、公的な標準規格あるいは事実上の標準規格により定まる形状を有していても、本規定の対象になりません。

形状に基づく機能の発揮が使用の主目的と認められない物品の例

意匠分類 物品 対応する規格
F3―1110 事務用紙 紙の原紙寸法 JIS P 0202
F3―130 日用紙(便せん、封筒など) 封筒 JIS S 5502
H4―410 記録媒体(磁気ディスク) コンパクトディスクオーディオシステム JIS S 8605
L6―20 建築用装飾板等 建築用ボード類の標準寸法 JIS A 0006

(「平成10年改正意匠法 意匠審査の運用基準」より)