引例が優先権主張を伴う場合の29条の2の適用について

出願Aに基づいて国内優先権主張を伴う出願Bがあるとします。
この場合、出願Xの審査において、29条の2が適用される場面の表現については悩ましいと思います。

例えば、

  • 出願Aに発明イが、出願Bに発明イロがが記載
  • 出願Xには発明イが記載

のとき、出願Bが公開された場合に、出願Aのイが公開されたことになり(41条3項)、出願Xは29条の2で拒絶されます。
このとき、引例として記載するのはAなのか、Bなのかというものです。
この辺は条文通りに記載すれば十分だと思いますが、論文レジュメにおいては記載が違うように見える場合もあります。


実務上、自分が担当する分野ではあまり見かけないみかけない事例で、多分今まで1回か2回位しか見たことがありません。
ただ、この場合の拒絶理由通知にはBを引例として記載されます。

例えば、特願2012-281949号の場合は、引用文献5により29条の2が拒絶理由として通知されています。
ここで、本願と引用文献5との時系列は以下の通りです。

  • 特許出願:特願2012-281949(出願日:2012年12月26日)
    • 優先権基礎:特願2011-285305(優先日:2011年12月27日)
  • 引用文献5:特願2012-260209(出願日:2012年11月28日)
    • 優先権基礎:特願2011-260796等(優先日:2011年11月29日)

この場合、引用文献5の出願日は、本願の優先日より後になり、引用文献5だけでは29条の2で拒絶されません。
しかし、引用文献5は国内優先権の主張を伴う出願です。
そして、優先権基礎の出願日(優先日)は、本願の優先日より前になりますので、29条の2で拒絶されるのです。

このとき、拒絶理由の引用文献としては後の出願である引用文献5が記載されています。
したがって、最初の事例でいえば、出願Xの拒絶理由通知においては、出願Bが引用文献として記載されています。

なお、拒絶理由の備考には、基礎出願との関係が記載されています。

優先権主張を伴う先願5の当初明細書の表8(優先基礎出願の当初明細書の表10)には、・・・を含む実施例Xのαがβによる抑制効果を有することが記載されている。
よって、本願の上記各請求項に係る発明は、先願5の当初明細書に記載されている。